Tペーストレーニング
Tペース(閾値ペース)トレーニングは、ランニングの中で持久力を高めるための重要なトレーニング手法です。
このペースは「心地よいきつさ」を感じるペースであり、比較的速く走っているものの、20〜30分ほどは維持できるというものです。
このペースは、エリートランナーにとってはハーフマラソンや20km程度のレースペースに相当し、通常のランナーでも、ある程度持続できる速さを指します。
Tペーストレーニングの目的
Tペーストレーニングの主な目的は、血中乳酸を抑え、その処理能力を高めることで持久力を向上させることです。
乳酸は身体が運動中にエネルギーを作り出す際に生成される副産物であり、閾値(しきいち)を超えると急激に増加します。
Tペースでのトレーニングにより、乳酸を効率的に処理し、一定の速さで長時間走り続けられる体力が鍛えられます。
Tペースの生理学的な定義
Tペースは、通常、最大酸素摂取量(VO2max)の85〜88%程度、または最大心拍数(HRmax)の88〜92%の範囲で走ります。
経験の浅いランナーの場合、この範囲は80〜86% VO2max程度になることもあります。
トレーニングの指標
Tペースでのトレーニングは、速すぎず、しかし「楽」でもないペースが理想です。
もし「今のペースを30〜40分間維持できるか?」という質問に対して、「できる」と答えられるペースがTペースです。
速すぎて維持できない場合は、ペースを少し落とす必要があります。逆に、あまりにも楽に感じる場合はペースを上げることを検討しましょう。
Tペーストレーニングの種類
Tペーストレーニングには、大きく分けて2つのタイプがあります。
- テンポランニング
テンポランニングは、連続して20分以上Tペースで走る方法です。
このトレーニングは、長時間一定の速さで走る自信をつけるために非常に有効です。
体力を蓄え、レースの終盤までペースを維持できるようになるための基本的な練習です。 - クルーズインターバル:
クルーズインターバルは、Tペースで走るセッションと短い休息を交互に行うインターバルトレーニングです。
例えば、1.6km(約1マイル)をTペースで走り、その後1分間の休息を挟んで5本行うなどです。
この方法は、テンポランニングに比べて走行時間の合計が長くなることが多く、運動負荷をより効率的に増やすことができます。
適切なTペースの量
1回のトレーニングでのTペースランニングの合計距離は、週の総走行距離の10%を超えないことが推奨されます。
例として、週に50km走るランナーなら、1回のTペーストレーニングで走るべき距離は5km程度です。
クルーズインターバルを行う場合、この距離を少し多めにして、30分程度の運動時間に調整することも効果的です。
テンポランニングのよくある誤解
「テンポランニング」という言葉の解釈にはさまざまなものがあり、混乱を招くことがあります。
例えば、60分間のテンポランニングや16kmのテンポランニングを提案するランナーもいます。
しかし、Tペースは、レースで60分間維持できる程度のペースであり、通常のトレーニングで1時間も走るのは現実的ではありません。したがって、テンポランニングを行う際には、適切な時間と距離で実施することが大切です。
実際の練習例
Tペースでのトレーニングをいくつかの方法で実践することが可能です。以下に例を示します。
- テンポランニング:20分間、連続してTペースを維持する。
- クルーズインターバル:1.6kmをTペースで走り、1分休憩を挟んで5回繰り返す。
- クルーズインターバルの応用:3.2kmをTペースで走り、2分休憩を挟んで3回繰り返す。
Tペース(閾値ペース)トレーニングは、Eペース(イージーペース)やMペース(マラソンペース)と同じように、ランナーのトレーニングプランの一部として取り入れられることが多いですが、それぞれのペースには目的やトレーニング効果が異なります。
以下では、TペースとEペース、Mペースの違いを比較して説明します。
ペースごとの目的
Eペース(イージーペース)
- 目的:
持久力の向上、疲労回復、心肺機能の向上 - 特徴:
長距離ランニングや回復走で使用される、比較的ゆっくりとしたペースです。
このペースは会話ができるほど余裕があり、長時間走ることが可能です。
一般的に、最大酸素摂取量(VO2max)の60〜70%のペースで走ります。 - トレーニング効果:
心肺機能の向上、筋持久力の発達、疲労回復の促進 - 具体例:
週に何回かのEペースランニング(例えば、10〜15kmの距離)を行うことで、総走行距離を増やしながら、身体を疲労から回復させつつ、基礎的な持久力を高める。
Mペース(マラソンペース)
- 目的:
マラソンでのレースペースの習得、持久力とレースの持続力を強化 - 特徴:
実際のマラソンで目指すペースで走るトレーニングです。
Tペースよりも少し遅く、Eペースよりも速いペースになります。
VO2maxの75〜85%のペースで、マラソンの距離(42.195km)を走り切れる速さを意識します。 - トレーニング効果:
持続的なペース管理能力、レース後半でのスタミナ強化、精神的な耐久力向上 - 具体例:
20〜30kmをマラソンペースで走る練習や、長い距離をMペースで走りながら、レースでの持続的なパフォーマンス向上を目指す。
Tペース(閾値ペース)
- 目的:
乳酸閾値の向上、持久力とスピードの両方を強化 - 特徴:
EペースやMペースよりも速いペースで、20〜30分程度維持できるペースです。
最大酸素摂取量の85〜88%程度の速さで走り、乳酸の蓄積を抑えつつ、より高いペースで長時間走れる体力を養います。
ペースとしては「心地よいきつさ」といった感覚です。 - トレーニング効果:
乳酸処理能力の向上、持久力とスピードの向上、レースペースでのパフォーマンスの最大化 - 具体例:
20分間のテンポランニングや、Tペースでのインターバルトレーニング(1.6kmのクルーズインターバル)を定期的に実施し、乳酸耐性を高める。
各ペースの違いまとめ
| ペース | 目的 | 特徴 | VO2maxの割合 | トレーニング効果 |
|---|---|---|---|---|
| Eペース | 持久力、回復 | ゆっくり、会話ができるペース | 60〜70% | 筋持久力、心肺機能、疲労回復 |
| Mペース | レースペース習得 | マラソンペースで持続的に走る | 75〜85% | レース持続力、スタミナ強化 |
| Tペース | 乳酸閾値の向上 | 速いが持続可能なペース、心地よいきつさ | 85〜88% | 持久力、乳酸処理能力、スピード強化 |
結論
Tペース、Mペース、Eペースはそれぞれ異なる目的を持ち、トレーニングのバランスを取ることが重要です。
Eペースは持久力の土台を築き、Mペースはレースでの持続力を鍛え、Tペースは乳酸処理能力を向上させてスピードと耐久力を同時に強化します。
Tペースのテンポランニングやクルーズインターバルを組み合わせて、ランニングの質を高め、効率よくスピードと持久力を伸ばしていくことができます。
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素運搬能力の向上に大きな効果が見込まれます。
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